有機農業推進議員連盟 設立趣意書
農業は、本来、自然界における物質の循環に依存し、かつ、これを促進する生産活動である。
しかるに、戦後の農業は、化学肥料と化学農薬に過度に頼るなど、環境に負荷を与え、土壌や人の健康をも脅かされる結果となっている。2003年度の農林水産省庁さによると、国民の8割が「農畜水産物の生産過程での安全性」が不安であるとし、生産者に望むことの5割が「安全・安心」、次いで2割が「有機栽培、無農薬・減農薬」となっている。
このような国民の食の安全・安心へのニーズに応え、我が国農業の持続的な発展を図るためには、化学合成物質を多投入する生産方式を改め、生産性等に留意しつつも環境負荷を軽減した生産方式(環境保全型農業)に転換することが重要であり、これは国の責務と考える。なかでも、有機農業は、有機性資源のリサイクルを重視し、化学肥料と化学農薬を使用しない生産方式であることから、最も環境保全に資するものと考えられ、この推進が肝要である。
諸外国においては、1980年代から、環境負荷を軽減した農業に取り組む生産者を支援する直接支払いや、有機農業に転換する際の減収に対する補償措置などが法的に整備・強化されてきており、気候風土の違いもあるが、我が国に比べて有機農業の取組が進展している国もある。
我が国における有機農業の取組は、30余年前に草の根で始まり、人間も自然の一部であることを自覚し、「身土不二」を掲げる生産者と消費者との「顔の見える関係」のもと生まれてきた。国による環境保全型農業を推進する政策は1992年に始まり、1999年の「食料・農業・農村基本法」に農業の有する自然循環機能の維持増進の必要性が明記された。その具体策として、環境保全型農業の導入計画について認定を受けた「エコファーマー」に対する課税特例等が講じられている。また、2001年、JAS法に「有機農産物等の検査認証制度」が導入され、不適切な有機表示を排除している。さらに、先駆的な自治体において、様々な独自の支援策が講じられている。
しかしながら、有機農業をめぐる現状は厳しく、依然として取組が進展しているとは言い難い。2002年度における有機農産物の生産は国内生産量の1%に満たない水準であり、また、2003年におけるJAS有機認証農家の販売農家に占める割合は0.2%、エコファーマーも1.7%とごくわずかである。2003年末には「農林水産環境政策の基本指針」が策定されたが、本年夏に示された「新たな食料・農業・農村基本計画」の中間論点整理における具体的な施策では、「農業者が最低限取り組むべき規範」を策定し、その実践を各種支援策の要件とすることや、環境保全への取組が特に要請される地域でのモデル的な取組に対して支援することにとどまっている。
我々は、人類の生命維持に不可欠な食料は、本来、自然の摂理に根ざし、健全な土と水、大気のもとで生産された安全なものでなければならいという認識に立ち、自然の物質循環を基本とする生産活動、特に有機農業を積極的に推進することが喫緊の課題と考える。
よって、ここに「有機農業推進議員連盟」を設立し、我が国の気候風土等に適した有機農業の確立とその発展に向け、有機農業実践者、消費者、行政、研究者等との連携のもと、我が国
及び諸外国の有機農業の実態と問題点を調査研究し、法的な整備も含めた実効ある支援措置の実現を図ることとしたい。
以上の趣旨にご賛同を賜り、本議員連盟に多くの方々の御参加・御協力を賜れば幸甚である。
2004年11月吉日